一つの箱がここから飛び出し、空へ静かに昇る情景を思い浮かべるとき、地上の小さな彫刻が空へと届く。一番下の手の上に乗った箱、その箱の中にもまた同じ手がある。一番下の手が、箱の重みをしっかりと受け止め、大きく指を開いているのに対し、二番目の手は、箱を空に投げ終えた直後の形をしており、緊張が解けた一瞬を示している。箱は指先からわずかに離れて浮いている。その箱の中にも再び同じ手がある。三番目の手は、空に返ってゆく箱を見送るかのように優しい姿をしている。その小さな手には別れの余韻が感じられる。堀内正和は、幾何学的な形態による抽象彫刻で知られる作家だが、同時に人間観察の鋭さと優しさを示す作品も制作している。この作品を見ていると、未来の別れはすでに最初の箱の中に種のように存在していることを教えられる。空に返る箱とは、いつかは天に返るわれわれ自身のことだと思えてくる。(Y.S.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 箱は空へかえってゆく No.5
- 作者名
- 堀内 正和
- 制作年
- 1966
- 分類
- 彫刻・インスタレーションほか
- 材質・技法
- ブロンズ
- 寸法
- 86×30×30cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1982
- 作品/資料番号
- 1975-00-4143-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/1389/