2m4Ocm四方の大画面に、鮮やかな黄色のネクタリンが4個、描かれているのが、まず眼に入る。だが注意深く見ると、そのネクタリンの上に君臨するように、真っ黒な楕円形の形象が置かれているのが見えてくる。これが、「卵」である。艶のないタールの黒い塊で表されたそれは、画面の中央に切り抜かれた深い空虚な穴のようにも見える。この絵画においては、このように色と形の前後や上下の位置関係は、暖味なままに投げ出されている。一方、果物の現実の大きさと比べて法外なスケール感は、描写としてのリアリティを喪失させてしまう。最初、果物を描いた「静物画」と思われたものが、ひじょうに抽象的な画面にも見えてくるのである。ドナルド・サルタンは、新聞から取った事件の写真、過去の名画(マネなど)、静物を写したポラロイド写真などをモティーフに、ハードボード、リノリウム・タイル、タールなどの工業素材を用いる全く独自の技法によって、類のない絵画を作りだした。それは、(例えば「静物画」といったような)絵画の伝統を取り上げながらその解体をも体現するものであり、1980年代のアメリカ絵画の成果の一つに数えられる。(Y.M.)rn
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 4 個のネクタリンと卵
- 作者名
- ドナルド・サルタン
- 制作年
- 1986
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩、タール/ビニールタイル、メゾナイト
- 寸法
- 249.5×247cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1992
- 作品/資料番号
- 1992-00-0047-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3972/
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