画面中央に冠をかぶり、右手に剣を持って立つ森の王がいる。彼は自らの地位を狙う者を殺そうと、森をさまよっている。物語はフレーザーの『金枝篇』(1890-1915)に基づく。この作品で驚くべきは、画面が皿で覆われていることである。皿は平面である画面に立体性を持たせ、同時にこの皿を割るアクションや割れ方の偶然性をイメージさせる。1978年、まだ無名のシュナーベルはスペインのバルセロナに旅行した。そこで出会ったガウディーの建築物のモザイクに示唆を受けた彼は、帰国後初めての「プレート・ペインティング(皿を用いた絵画)」を発表、<ニュー・ペインティング>と呼ばれる1980年代前半の絵画動向の中心人物となっていく。もちろん、彼の成功は画商メアリー・ブーンの力にもよるが、その本質には<ミニマル・アート>と<コンセプチュアル・アート>の狭間で「絵画は瀕死の状態であった」と言われる1970年代の末に、彼が物語性を持った具象、マティエールの豊かな絵画を提示したことがあろう。この「森の王」は、アート・シーンで頂点を究めた彼の孤独な自画像かもしれない。(Y.H.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 森の王
- 作者名
- ジュリアン・シュナーベル
- 制作年
- 1984
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩、プレート、ボンド、ブロンズ/板
- 寸法
- 285×585cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1992
- 作品/資料番号
- 1992-00-0037-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3962/
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