キーファーは政治的、思想的には様々に評されるが、その芸術は、神話や歴史に題材を求めながら二元論的な精神と物質の相剋を追求しているといえよう。そのための手段として彼は、画面に鉛、藁、石など元素的な存在そのものを暗示する物質を付着させたり、歴史の記録である写真を用いたりもするが、戦後の美術において絵画芸術に主題と意味を復権させた画家としてその存在は大きい。この作品はキーファーが精力的に活動していた1980年代前半の大作のひとつで、Mark(ドイツ辺境の領土、ここではブランデンブルク辺境領を指す)に広がる砂の上に、太陽に近づきすぎて燃えて墜落したイカルスの翼が落ちてくる場面が描かれている。派手な作品ではないが、ギリシア神話とドイツの歴史が重なり合う主題、砂や写真を画面に付着させる技法、象徴的に燃える火、作者のライトモティーフとも言えるパレット、画面下から上へとせりあがる作者独特の視点の移動等、キーファー芸術の特色が集約された1枚である。(M.S.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- イカルス―辺境の砂 [Ikarus – märkischer Sand]
- 作者名
- アンゼルム・キーファー
- 制作年
- 1981
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩、アクリル・エマルジョン、ニス、砂、写真/カンヴァス
- 寸法
- 290×360cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1992
- 作品/資料番号
- 1992-00-0036-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3961/
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