青い地の上に、透明な液体が溜まっているのが、トロンプ・ルイユ風にリアルに描かれている。この液体の形を注意深く見ていると、絵のタイトルと同じ、「Western」というアルファベットの連なりが、かろうじて見分けられるだろう。この「文字」の右側には、鮮やかな色のガラスのビー玉が二つ、影を落としており、また青色の地は上方に向かって暗色へとグラデーションしている。しかし、「西部」とか「西方」とか言う意味の「Western」という単語とのつながりを窺わせるような要素は、絵のなかには何も認められない。ルッシェは、形象・映像としての文字・言葉を、早くから自分の中心的なテーマとしてきた。文字・言葉にとって、その外皮である形象・映像は、実体のない記号を現実世界に定着するための単なる容器にすぎないはずである。だが、この外皮が絵画として芸術化されると、記号としての伝達性は希薄になっていく。1960年後半に描かれた、液体によって文字を形象化した連作においては、映像と記号がある意味で二律背反的な性格を持つことがよく示されている。つまり、一方に意識が集中されると、他方は消え去るのである。こうして実現された、意味という深奥を欠いた切れ目のない完全な表層性は、映像と言語の双方に向けられたニヒリスティックな不信の眼差しを、よく体現している。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 2つのビー玉のあるウェスタン
- 作者名
- エドワード・ルーシェイ
- 制作年
- 1969
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩/カンヴァス
- 寸法
- 152.4×137.6cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1992
- 作品/資料番号
- 1992-00-0033-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3958/
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