抽象表現主義の絵画は、作品を何らかの物や主題を描き写したものとしてではなく、画布に面した画家の行為の軌跡としてとらえることから、アクション・ペインティングとも称される。1953年春、デ・クーニングがシドニー・ジャニス・ギャラリーでの個展で《女》のシリーズを発表した時、それが具象への回帰であると批判する者もあった。しかし、彼自身は決して意識的に具象を捨てたことはなく、中でも女性像は、1940年代から一貫して彼が描いてきた主題である。
《女》のシリーズの中でも、1960年代半ばに描かれた本作では、彼の50年代の女性像に特徴的であった不敵な笑顔は力強い筆触と錯綜する色彩にかき消え、肢体はグレーの描線を手掛かりにしても殆ど判別がつかない。つまり主題であるはずの女性像は、背景とも肌の色ともつかないピンクの地に暖昧に立ち現れてくるのみなのである。一枚の絵画を前にそれが具象か抽象かを問題にすることの無意味さを主張していたデ・クーニングは、かつて「すべての絵には顔がある。」と皮肉交じりに言っているが、この一見抽象画にも見えるような《女》では、画面全体がひとつの「顔」として、見る者を招いているとも言えよう。(K.O.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 無題(女)
- 作者名
- ウィレム・デ・クーニング
- 制作年
- 1966-67
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩/紙、カンヴァス
- 寸法
- 190.5×109.2cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1992
- 作品/資料番号
- 1992-00-0032-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3957/
東京都現代美術館のその他の収蔵品 (8082)
日曜日のウォール街
大久保 泰
東京都現代美術館
[小清水漸作品写真集 3](13/30)
小清水 漸
東京都現代美術館
盗まれた会話
北川 健次
東京都現代美術館
裸婦
木内 克
東京都現代美術館
Ilulissat / GREENLAND #3
石川 直樹
東京都現代美術館
記号の静物
駒井 哲郎
東京都現代美術館
「ランカの包囲」[『ラーマーヤナ』六の巻より]
駒井 哲郎
東京都現代美術館
作品
松谷 武判
東京都現代美術館
『博物譜』(15/28)
恩地 孝四郎
東京都現代美術館
[不詳]
オノサト トシノブ
東京都現代美術館
狂った男
浜田 知明
東京都現代美術館
[斎藤義重作品写真集:ファイル 7] 42/42
斎藤 義重
東京都現代美術館
[小清水漸作品写真集 4](24/28)
小清水 漸
東京都現代美術館
[斎藤義重作品写真集:ファイル 1] 117/127
斎藤 義重
東京都現代美術館
北辺の風景
北岡 文雄
東京都現代美術館
演奏家集団-new direction 定期演奏会 4 1963.12.19 草月会館ホール
神田 昭夫/杉浦 康平
東京都現代美術館