五月女哲平(1980-)は、最初期には立体作品を手がけていましたが、2009年頃からは、絵画を主なメディアとして制作しています。鮮やかな色彩を特徴としていた五月女が色を排除し、色面をモノクロームに変換した作品が、2011年の震災後に描いた《He, She, You and Me》です。男性か女性か、正面向きか背中を向けているのか、そのどちらにも見える人物像が重なり合う「He and She」シリーズを展開したもので、モノクロームの画面の奥には、鮮やかな色彩が隠れているのが見て取れます。
五月女の絵画は、ミニマリズムやカラーフィールドの系譜と見ることもできますが、それらが排除したイリュージョンも取り込んでいます。見る人によって異なる視覚経験の複数性をポジティブにとらえ、絵画の中に、その複数性そのものをあらわすことで、絵画が内包する物語を鑑賞者自らが紡ぎ出せるシステムを生み出しています。テーブルの上のコップから空の月まで、私たちの目には、日々、遠近を超えて様々なものが映り、私たちはそこから何かを感じたり、記憶と結びつけたりします。そんな連想のように、五月女の絵画は、具体的なものと抽象的なもの、自然物と人工物、個人の経験と歴史といった境界をなだらかにして見せてくれているようです。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- He, She, You and Me
- 作者名
- 五月女 哲平
- 制作年
- 2012
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- アクリル/カンヴァス
- 寸法
- 227.3×363.6cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 2017
- 作品/資料番号
- 2017-00-0097-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/9604/
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