今井俊介(1978-)は、初期には、ポルノグラフィや花など、インターネット上にあふれる既存のイメージを抽出し、重ね合わせ、判読不可能な別のイメージとして再生させる絵画などを描いていました。近年は、あざやかなストライプやドットが平滑な画面に旗のように波打っているように見えるシリーズを展開しています。今井はまず、コンピュータ上で直線のストライプをランダムに配置します。それを紙にプリントし、その紙を手で立体的に歪ませ、曲線や奥行きをつくり、その一部を単純な色面に還元しながら、カンヴァスに写し取っていきます。抽象画の側面を持ちながら、画家の目の前にモチーフがあり、それを見ながら描いているという意味では、具象画であるとも言えます。
今井は、見るという経験を含む、絵画の外側にある身体性や距離の問題に意識的に取り組んでいる画家です。人の眼は、絵画が平面であることを認識しながらも、奥行きを感じ、空間を見出すものです。しかし、奥行きや空間をどのように把握するかは、それが身体的なものであるだけに、個別に異なります。鑑賞経験が起きる絵画の外側の物理的空間も、視覚経験に影響を与えます。今井は、独自の制作プロセスを経て、奥行きを一旦平面に還元しつつ、ストライプのうねりやその重なり、色彩のコントラストなどにより、再び奥行きを呼び戻します。そのようにして、イリュージョンを生み出す絵画のシステムを批評的に解体しつつ、鑑賞者を「見る」ことの能動的な経験へと導くのです。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- untitled
- 作者名
- 今井 俊介
- 制作年
- 2017
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- アクリル/カンヴァス
- 寸法
- 162×180cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 2017
- 作品/資料番号
- 2017-00-0021-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/9138/
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