蹲まるような姿の庭石が、自然の四つの相の内におかれている。一隻ずつが独立した作品ではあるが、それらが一組で四季を暗示していることは明らかであろう。《雨》では、佐渡の赤玉と呼ばれる石が、春の雨に濡れて赤く発色している。《水》では映しだされた対称な姿によって、形態にたいする興味が喚起される。秋の《月》が照らす石は、東京上野の山で作者がたまたま見たものだという。その右手前に投げかけられた影の鮮やかさが、光の明澄さを印象づける。《雪》は、堅山南風邸に取材したもの。厚く苔むした蹲踞(茶庭の手洗鉢)にだけ雪が降り積っている。
彼の壮大な自然描写に親しんだ眼には、この小さな風景は奇異に映るかもしれない。石の姿を借りて自然を象徴的にあらわす手法、四つの個性的な石の姿の対比に形と色の面白さを見出す態度は、彼の試行時代の産物である。本図は、昭和28年(1953)日本美術院の同人に推挙され、翌年には第4回(昭和28年度)芸能選奨文部大臣賞を受けることにもなった、英遠の出世作と言うべき作品である。(R.N.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 庭石
- 作者名
- 岩橋 英遠
- 制作年
- 1953
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 紙本彩色(二曲四隻)
- 寸法
- 各150×142cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1991
- 作品/資料番号
- 1991-00-0001-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3836/
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