病弱のため外交官を断念し画家を志した長谷川潔が、最初にのめり込んだのは板目木版画であった。文学同人誌『聖盃』(のちの『假面』)の表紙を手がけ、1916年には日本初の版画グループ「日本版画倶楽部」を結成する。1918年に渡仏、その地で生涯を送ることになる。長谷川は、写真の発明によって衰退していた銅版画の技法メゾチント(マニエール・ノワール)を復活させ、さらに独自の技法を加えて発展させ、フランスで高く評価された。初期のメゾチントによる作品は長谷川独特の交叉線が画面全体を覆った風景画が中心であったが、第二次世界大戦中のフランスでの苦難のなか、彼はあるとき見なれた1本の木から、この世に存在する一切のものの存在する意味とそのなかにひそむ神秘、そしてそれぞれがゆるやかに関連した宇宙を見出し、それと同時にモティーフは風景から身近な静物へと変化した。「小鳥は多くの場合、“エスプリ”あるいは小生自身であり、魚は“マチエール”、草花及び種子は大自然の神秘を、薔薇は永遠の美、又は真理を表わさんとしたものです。 サイコロ独楽は人生を、西洋将棋の画は人生の争いを、幾何円錐体と宇宙方程式は目に見えぬ世界ユニベールの真理を表わさんとしたものです」と自らも記したといわれるように、作品中に登場する静物の位置や関係性は、すべて長谷川の思想、精神を表わすための意味をもったものとなっている。またエングレーヴィングにおいても独自の方法で発展させ、日本での先駆的な存在となっている。(A.T.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 置き忘れられた人形
- 作者名
- 長谷川 潔
- 制作年
- 1953
- 分類
- 版画
- 材質・技法
- エングレーヴィング(雁皮刷)
- 寸法
- 31.3×23.2cm
- エディション等
- Ed. 5/50(画面外左下)
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1987
- 作品/資料番号
- 1975-00-7495-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/2773/
東京都現代美術館のその他の収蔵品 (7905)
Work “97”
吉田 克朗
東京都現代美術館
樺太国境
三迫 星洲
東京都現代美術館
[小清水漸作品写真集 3](13/30)
小清水 漸
東京都現代美術館
Untitled
加藤 泉
東京都現代美術館
H氏の優雅な生活
平賀 敬
東京都現代美術館
不安な都市 鉄条網のなかを走る人
石井 茂雄
東京都現代美術館
「インドラジットの葬送」[『ラーマーヤナ』六の巻より]
駒井 哲郎
東京都現代美術館
twist #3
冨井 大裕
東京都現代美術館
小さなスフィンクス
オーギュスト・ロダン
東京都現代美術館
《柔かに、還元》シリーズのための前哨的作業譜断片(A-7)
中西 夏之
東京都現代美術館
顔[『蟻のいる顔』より]
駒井 哲郎
東京都現代美術館
YOU MAY ATTEND A PARTY WHERE STRANGE CUSTOMS PREVAIL
木村 友紀
東京都現代美術館
ふせん
末永 史尚
東京都現代美術館
日本とアメリカのためのアンブレラ・ジョイント・プロジェクト 常陸太田市郊外
クリスト&ジャンヌ・クロード
東京都現代美術館
人物(女)
鹿子木 孟郎
東京都現代美術館
1970年代美術記録写真集 「木下宏 1970年4月19日 子供の国 横浜」
安齊 重男
東京都現代美術館