版画、特に銅版画の場合はどの技法を使用するかによって、その作品の印象は全く異なったものになる。黒から白への微妙な諧調を使用して作られたこの作品は、黒の背景の中に様々な形態が浮かび上がり浮遊している。目を閉じればこれらの形態は一瞬のうちに消え去るごとく儚いもののようにも見える。腐食の度合いによりその色調を変えることのできるアクアチントの技法は、面としての表現も可能であり、この作品においてはその技法が作者の意図を見事に伝えている。駒井は銅版画を日本に根付かせた功労者の一人であり、多様な技法を駆使して多くの優れた銅版画作品を残した。この初期の作品では、彼の「夢こそ現実であればよい」という夢見がちな面が強く、空中に浮遊する形態も何か玩具のようであり、ノスタルジックな気持ちを誘う。これら一群の夢をテーマとした作品の後、作者はビュランを使用した厳しい線による作品を発表し、一つの転機を迎えるのである。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 束の間の幻影
- 作者名
- 駒井 哲郎
- 制作年
- 1951
- 分類
- 版画
- 材質・技法
- アクアチント、エッチング、ドライポイント
- 寸法
- 18×29cm
- エディション等
- Ed. Ep.d'Artiste(画面外左下)
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1979
- 作品/資料番号
- 1975-00-6409-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/1976/
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