伊藤公象は、土を素材とした陶の手法によって生命力あふれる作品を多く生み出してきた作家である。自然と人為の境界を縫うようなその仕事は、人と空間・時間をめぐる洞察として高く評価されており、本作《アルミナのエロス(白い固形は…)》にもその特質がうかがえる。作品を構成するピースはアルミナと長石の粉末を混交し高温で焼成して得られるもので、個々は多様に砕けているため、それらの集合は同一でありつつ全て異なるという自然の在り様と重なり、自然の風化をも内包しているように見える。作家は、これらのピースを、展示の度に異なる形として構成してきた。1984年の発表時より今日まで《アルミナ…》は、幾度も姿を変えてきたのである。加えて、当初300余だったピースは2009年の個展を機に500余となり、その姿のみならずスケールをも大きく変えて今に至っている。
風化を許容しつつ姿を変える作品として、当作は二重の意味で変化それ自体をその本質としていると言えよう。それは作品の同一性とは何か、という問いを私たちに投げかけるものだ。変化そのものがこの作品の質であるならば、私たちがここで「作品」として長く保存し、後世に伝えていくものは何であるべきなのか――個々の欠片はそれだけでは作品として機能しない以上、作家の関与、その行為や思想、何よりもその作品体験を伝えていく方法を探り続けることが、美術館に求められていると言えるだろう。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- アルミナのエロス(白い固形は…)
- 作者名
- 伊藤 公象
- 制作年
- 1984
- 分類
- 彫刻・インスタレーションほか
- 材質・技法
- アルミナ、長石の微粉を焼成
- 寸法
- インスタレーションサイズ可変
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1984
- 作品/資料番号
- 1975-00-5010-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/1478/
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