70センチほどの高さの鉄の直方体に、一定の幅を保ち幾何学的に彫りめぐらされた溝。その様子はまさしく、空高くから見下ろした何処かの都市や遺跡の迷宮のようである。保田は、初め具象的な彫刻を制作していたが、1968年に約9年にわたる長いイタリア留学の末帰国してからは、都市や遺跡など、建築を思わせる抽象彫刻を制作してきた。それらは、上空高くから見下ろしたような客観的視点をとっており、時には彼が訪問したことのある具体的なイタリアの地名を付したものもある。しかし、それらの作品はいずれも彼が訪問したという経験や実在性などの温もりやセンチメンタルを一切排除し、冷やかなまでのストイックさと静謐さを湛えている。1981年に制作された本作品でも、俯瞰の視点から捉えた僧院には、厳粛さと寂寥感が漂い、固有性が消滅し、また外観は無機質で殺伐としていながらも、内部では人々の生の葛藤が錯綜する、現代の都市の様相を見ることができる。(A.T.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 迷宮のある僧院
- 作者名
- 保田 春彦
- 制作年
- 1981
- 分類
- 彫刻・インスタレーションほか
- 材質・技法
- 鉄
- 寸法
- 2点組:72×150×30cm、71×60×30cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1982
- 作品/資料番号
- 1975-00-4171-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/1418/
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