「テンション」と「コンプレッション」―「伸張」と「圧縮」を意味する物理学風の単語を並べたタイトルが、作家の関心のありようを示す手がかりである。アメリカでの生活経験豊富な篠田は、1960年当時注目を集めていた建築家であり物理学者でもあったバックミンスター・フラー博士の影響下に、「宙吊り構造」を備えるのこのシリーズを考案した。例えば、本作品の中央に浮かぶ金属体は、四方からのびているステンレス・ワイヤーの張力に支えられ、空中の一点でピタリと静止している。重いはずの金属体が、地球の引力によって落下せず、まるで手品のように見事に宙に浮かぶ仕掛けは、見る者にスリルと緊張感を与える。「重力による束縛から彫刻を解放するために」制作されたという作品は、逆にわれわれに「地球の引力」というものを強く意識させる。rn篠田の作品は、今世紀の科学・物理学の飛躍的な発展を背景に、われわれを取り巻く世界の構造を新たに分析し、端的に視覚化しようとするものである。情緒的なものを排したメタリックな作風が近年のトレードマークであるが、時としてアース・ワークともいえるプロジェクトが企図されるのも、「地球規模」の関心の延長線上にあるものと解釈できるであろう。(C.M.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- テンションとコンプレッション4304
- 作者名
- 篠田 守男
- 制作年
- 1974
- 分類
- 彫刻・インスタレーションほか
- 材質・技法
- ステンレス、ワイヤー
- 寸法
- 142.5×105.5×105.5cm
- 受入年度
- 1976
- 作品/資料番号
- 1975-00-4067-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/1310/
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