
画面を覆い尽くす水滴は、わずかな震動があれば今にもばらばらと落ちてきそうだ。近寄れば地塗りのない麻布に直接描かれた水滴の描写にすぎないとわかるのだが、観者はこの見事なイリュージョンに感心してしまう。いってみれば、これは西洋で古代から人気を博してきたトロンプ・ルイユ(だまし絵)の一典型に過ぎない。しかし、写実性や迫真性を旨とするトロンプ・ルイユの伝統に根ざしながら、この画家は水滴ばかりを執拗に描き続けることによって、物質としての画面とそれが作り出すイリュージョンとの微妙な関係を問いかけてきた。作者自身によれば、故郷の山河の湧き水や清流の思い出が水滴というモティーフの制作動機になっており、水滴を描くことは山水画を描く気持ちに近いという。彼の近年の一連の作品は《回帰》というタイトルをもつが、1粒の水滴が集まって渓流となりやがて大河となるという悠久の大自然のヴィジョン、うがった見方をすれば、分断され離散した民族をばらばらの水滴にたとえ、未来の合流を祈念する民族的悲願さえも、ここには宿っているのかもしれない。(K.M.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 水滴 J.T.82024-79
- 作者名
- 金 昌烈
- 制作年
- 1979
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩/カンヴァス
- 寸法
- 181.5×227cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1983
- 作品/資料番号
- 1975-00-0576-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/606/
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