吸盤の並ぶ巨大なタコの足が、もつれ絡み合いながら、画面をのぼっていく。その背後にはモノクロームの幾何学的な格子がどこまでも続いている。どうやら、カーテンウォールを思わせる無機的な構築物と、生命体のダイナミックなエネルギーがここでは対比されているようなのだ。テーブルの上のちょっとユーモラスなタコの足を切ってもそのエネルギーは増殖する吸盤のように途絶えることはない。タケミヤ画廊での再度の個展に本作を出品した1956年、「造形を強く打ちだしていく造形主義的抽象作品は……あまりにも画面の物だけにこだわるために、社会の上における人間と物質との関係という問題をなおざりにするきらいがあります。」と吉仲は語っている。アンフォルメル華やかな時期にあって、画面をなめらかに仕上げたり、わざわざ引き裂いたカンヴァスを丁寧に縫い取るやや工芸的とも言える手法に、時流におもねることなく絵画の可能性に挑戦し続けた作家の独自の姿勢を見ることができるだろう。(N.S.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 地球人
- 作者名
- 吉仲 太造
- 制作年
- 1956
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩/カンヴァス
- 寸法
- 182×228cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1986
- 作品/資料番号
- 1975-00-0550-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/578/
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