
無残に破れ傷ついた画面が眼前にある。何か手荒な力が加えられた表面は、亀裂や穴となり、画面の向こう側をのぞかせる。めくれた表面の下からは古新聞が顔を出し、穴からは重なった新聞の断層が見え隠れする。人の手によって作りだされた傷痕と、そこから生まれる表層と内層の複雑なマテイエールは、むしろ豊かな表現効果を生みだしている。rn作家としてのスタートを切ったばかりの嶋本昭三は、当時経済的な理由から新聞紙を何枚も重ね、糊でかためた私製カンヴァスを使って絵を描いていた。ある時、その上を何度となく力を込めて鉛筆で線描を引くうちに、古新聞に鉛筆は突き刺さり、穴が偶然に生まれていたという。作家の激しい行為がそのまま凍結されたようなこの「穴」の連作に、厳しい師であった吉原治良も惜しみない賞賛をおくったらしい。後に彼らが創設する「具体美術協会」の理念にも通じる、人間と物質との激しい格闘の跡を見るような本作品は、数年後機関紙『具体』の創刊号を飾っている。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 作品(穴)
- 作者名
- 嶋本 昭三
- 制作年
- 1950-52
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 白ペンキ、鉛筆/新聞紙
- 寸法
- 194×130.6cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1981
- 作品/資料番号
- 1975-00-0238-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/250/
東京都現代美術館のその他の収蔵品 (7877)
![作品画像:[1960s-70s 日本の前衛美術家の記録] 万歳党](https://museumcollection.tokyo/wp-content/uploads/2022/08/7286.jpg)
[1960s-70s 日本の前衛美術家の記録] 万歳党
平田 実
東京都現代美術館
![作品画像:[吉田克朗関係資料一括]](https://museumcollection.tokyo/wp-content/uploads/2023/11/24705.jpg)
[吉田克朗関係資料一括]
吉田 克朗
東京都現代美術館

葉・Feuillage
駒井 哲郎
東京都現代美術館

RON (k)
一原 有徳
東京都現代美術館

ついり晴れの鏡容池
黒田 重太郎
東京都現代美術館

人物(男)
鹿子木 孟郎
東京都現代美術館

清水の富士
五姓田 義松
東京都現代美術館

リフレクション
スゥ・ドホ
東京都現代美術館

紙と青いインクによるプール
デイヴィッド・ホックニー
東京都現代美術館

DADA ’62
飯村 隆彦
東京都現代美術館

64 – B
オノサト トシノブ
東京都現代美術館
![作品画像:花がひらく[『彼岸花』より]](https://museumcollection.tokyo/wp-content/uploads/2022/08/16888.jpg)
花がひらく[『彼岸花』より]
秀島 由己男
東京都現代美術館

舞台「醒めて歌へ」
鈴木 賢二
東京都現代美術館

2つの椅子の絵
デイヴィッド・ホックニー
東京都現代美術館

演奏家集団-new direction 定期演奏会 1 1963.5.26 草月会館ホール
神田 昭夫/杉浦 康平
東京都現代美術館
![作品画像:8つの作品(8)[『高橋秀版画集』より]](https://museumcollection.tokyo/wp-content/uploads/2022/08/19529.jpg)
8つの作品(8)[『高橋秀版画集』より]
高橋 秀
東京都現代美術館