
無残に破れ傷ついた画面が眼前にある。何か手荒な力が加えられた表面は、亀裂や穴となり、画面の向こう側をのぞかせる。めくれた表面の下からは古新聞が顔を出し、穴からは重なった新聞の断層が見え隠れする。人の手によって作りだされた傷痕と、そこから生まれる表層と内層の複雑なマテイエールは、むしろ豊かな表現効果を生みだしている。
作家としてのスタートを切ったばかりの嶋本昭三は、当時経済的な理由から新聞紙を何枚も重ね、糊でかためた私製カンヴァスを使って絵を描いていた。ある時、その上を何度となく力を込めて鉛筆で線描を引くうちに、古新聞に鉛筆は突き刺さり、穴が偶然に生まれていたという。作家の激しい行為がそのまま凍結されたようなこの「穴」の連作に、厳しい師であった吉原治良も惜しみない賞賛をおくったらしい。後に彼らが創設する「具体美術協会」の理念にも通じる、人間と物質との激しい格闘の跡を見るような本作品は、数年後機関紙『具体』の創刊号を飾っている。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 作品(穴)
- 作者名
- 嶋本 昭三
- 制作年
- 1950-52
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 白ペンキ、鉛筆/新聞紙
- 寸法
- 194×130.6cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1981
- 作品/資料番号
- 1975-00-0238-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/250/
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