白いYシャツを着て、ブルーのズボンをはいた男が立っている。その男は、星条旗によく似た赤と白の縞模様の布を頭からかぶっている。赤、白、青の組み合わせは実に鮮やかで、遠くからも人目を引きつける。だが、そのような単純明快な見かけとは裏腹に、この作品では、たった一つの肝心なことがわれわれには隠されている。男の顔が見えないのだ。布の下で男がどのような顔をしているのか、何を考えているのかが分からない。そこから生まれるもどかしさ。そのことが、かえってわれわれの好奇心をかき立てる。作者は1962年の第14回読売アンデパンダン展で自分自身を出品作品の一部とするハプニングを行い、注目を集めたが、それは紅白の幕の前に置いたドラム缶の中で一日中窮屈な姿で立ち尽くすというものであった。それは人間が彫刻になることであったが、この作品では彫刻が人間となり、ハプニングを行っている。見かけは華やかな布におおわれた男はこう問いかけているようだ。表面的な刺激に興奮させられる現代社会の中で、われわれは実は何かに規制され、自由で豊かな「内面」や「個性」を喪失していないだろうかと。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 無題
- 作者名
- 小島 信明
- 制作年
- c.1964-66
- 分類
- 彫刻・インスタレーションほか
- 材質・技法
- ラッカー/ポリエステル樹脂
- 寸法
- 175.4×109×47.5cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1983
- 作品/資料番号
- 1975-00-4050-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/1289/