
文谷有佳里(1985-)は、幼い頃よりピアノに親しみ、大学では作曲を学ぶかたわら現代音楽の実験的なパフォーマンスに加わるなど、音楽と身体表現に関わってきた作家です。
線描は、学生時代から作曲とともに続けていた、小さい、私的なドローイングに端を発するものと言います。その後、美術系の大学院に進み、ドローイングを活動の中心に据えていった作家ですが、作曲に勤しむ中でなされた、見えない音を捉え視覚化する膨大な記譜の経験が、これらの、素早い、スピード感のある線を可能にしたと言えそうです。多くの作品には、描出の速度を損ねないよう、短い時間で乾く、細い文具ペンが用いられています。
文谷の線描は、当初は、植物を思わせるような有機的、オートマティックな曲線が支配的でしたが、2009年に建築の書物や図面に関心を寄せたことから、即興的な線が踊る画面上を大胆に横切ってパースや区分けを作り出す、異なる太さをもつ直線が加わり、独特の空間を持った作風へと展開していきました。
音を捉え、視覚化する記譜の線、自動的に引かれる有機的な線、図面で使用されるような画面を分けるしっかりした直線、そして点のように微かな線。これら種々の線を目で追いかけるうちに、セッションにも似たいくつもの呼びかけや応答、重なり、広がりが、見る者をとらえていきます。自立した多様な線が、規則的にまた即興的に交錯する文谷の作品は、パフォーマティヴなプロセスそのものとして、ドローイングという行為の持つ幅広さと奥行き、複数のジャンルにわたる「線」の魅力を私たちに伝えます。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- なにもない風景を眺める 2017.6.3
- 作者名
- 文谷 有佳里
- 制作年
- 2017
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 鉛筆/ケント紙、パネル
- 寸法
- 103×72.8cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 2017
- 作品/資料番号
- 2017-00-0018-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/9135/
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