1959年、ベルギーで生まれたフランシス・アリスは、建築と都市計画を修めたのち、86年にNGOに参加、派遣先のメキシコで都市の考察として観察や撮影、パフォーマンス等を重ね、89年にそれらを作品として発表。以降、自身の身体を媒介に都市と関わるアーティストとして活動している。「アクションによる介入」と呼ばれる彼の行為は、独自の仕方で都市の歴史や政治、文化的背景を考えるものとして、近年高い注目を集める。
当作の舞台は、ヨーロッパとアフリカを隔てるジブラルタル海峡。天気の良い日には対岸が望めるこの海峡は、アフリカからヨーロッパへ密かに渡航を企てる人々を惹きつけてきた。アリスはこの地に「グローバル経済の促進を図りながら、同時に大陸をまたぐグローバルな人の流れを制限する」という「現代に潜む矛盾」を見て介入を企図する。それは、両岸から子供たちが列を作り、両大陸の間に想像の橋を架けるというもの。当作品はそのプロジェクトの記録である。
彼のプロジェクトは、作家自ら「物語」と呼ぶように、細部と全体を欠き、時に結末や合理をもたず、十分な余白が多様な解釈を生んでゆく性質を持っている。当作でも、水平線の先での出会いの結末は明かされない。この一連の記録は、「矛盾」を端緒とした動機に相応しく、開かれた物語として常に想像によって補完されながら幾度も再生されるものといえよう。実社会や政治といった事実の領域に感性の領域を重ねながら関わるアリスの仕事は、物語というものの可能性をたずねつつ、思いがけない仕方で私たちの現実を浮き彫りにする。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 川に着く前に橋を渡るな
- 作者名
- フランシス・アリス
- 制作年
- 2008
- 分類
- 彫刻・インスタレーションほか
- 材質・技法
- 映像インスタレーション:2チャンネル・プロジェクション、油彩画2点、彫刻1点、ドローイング15点で構成
- 寸法
- 8分 インスタレーションサイズ可変
- 時間
- 8分
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 2013
- 作品/資料番号
- 2013-00-0001-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/7372/
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