小林孝亘が描き出すのは、作家が外界と接する中で「気になった風景」と言う。これまでも、木漏れ日や公園の陽だまり、眠る人、枕や食器といった身のまわりの物をモチーフに多くの絵画を生み出してきた。タイと日本を行き来する生活の中でモチーフを見出し、こっくりした絵肌と切り詰めた構図をもつ絵画作品によって、高い評価を受けてきた作家である。
画面の内側から光りを放つようなこの作品は、作家がバンコクに初めて長期居住した際に描かれた。それまで多く「光」の様態を描いてきた作家が、「タイでは昼の光は強すぎ、夜の、やわらかく暖かな光に魅了されて」描いたものである。ここでは、夜間、オレンジの光の下に働く工事現場の作業員がモチーフになっている。「Working Man=働く人」は背景をもたずシンプルに抽象化され、左右対称の構図のうちにおさめられることで一種の普遍性を帯び、「人が働く」「住まいを建てる」ということそのものが抽出されている。画面上部から放たれる光源が人物や建物を浮かび上がらせ、あたかも夢の一場面のような幻想性をもつ画面を生み出した。音の出る作業を描きながらも、一種の静けさと余韻が感じられるところも作品の魅力と言えよう。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- Working Man
- 作者名
- 小林 孝亘
- 制作年
- 1999
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩/カンヴァス
- 寸法
- 200×240cm
- 受入区分
- 寄贈
- 受入年度
- 2004
- 作品/資料番号
- 2004-00-0004-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/4897/
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