1957年の第1回国際青年美術家展で大賞を受賞し、その奨学金を基に翌年パリに渡った前田は、1959年にパリのランベール画廊で個展を開いた。この個展を訪れたフランス人批評家ジェレンスキーが「君の世界はマンダラだ」と語り、それを機に前田が曼陀羅を自作に採り入れていったのは有名な逸話であるが、米国の画家サム・フランシスもこの個展を訪れ、前田の新作を所望したことはあまり知られていない。そのフランシスのために制作されたのが本作《無題》である。パリでのアトリエが手狭であったため、折り畳んだ状態で制作可能な屏風の形式が採用された。また本作は、前田の《人間風景》シリーズのNo.34の作品として描かれたが、フランシスの住む米国に送られる際に、通関上の理由から、屏風という装飾品ではなく美術品であることを示す《無題》の題名が付された。記号化された人間が密集し、光の輪を求めるこの「人間風景」は、空襲を受けてもなお群衆となって立ち上がる人間の生命力を示唆し、以後、曼陀羅の中に宗教性を越えた魂の表現を見出す前田の作風へとつながっていく。(K.H.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 無題
- 作者名
- 前田 常作
- 制作年
- 1960-63
- 分類
- 水彩・素描
- 材質・技法
- グワッシュ/和紙(六曲一隻)
- 寸法
- 200×300cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1996
- 作品/資料番号
- 1996-00-0027-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/4317/
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