同じ人体像でも全身像と胸像では異なる性格を持っている。例えば古代ギリシアの全身像は身体造形に理想の均整を求めたのに対し、古代ローマで隆盛をみた胸像は顔だけで個人の性格や年齢を表現し、胴部はその台座としての役割を果たしている。
舟越桂の木彫半身像《静かな向かい風》は、どこか遠くを見るような静謐で個性的な顔が台座としての胴部に乗るという点では胸像と類似性を持つ。しかし、腰から上という比較的大きな上半身が示す微かな傾きからは、一個の全身像としての重心の位置と均整を見てとることができる。この意味で舟越桂の半身像は、西欧伝統の胸像と全身像の双方を指向しつつ、両者間の微妙な位置に落ち着く作品と言えよう。一方、この作品にほどこされている玉眼は奈良県長岳寺阿弥陀三尊像(1151年)以来の伝統的彫刻技法である。著名な彫刻家舟越保武を父とし、父子共にカトリック信者である作者の最初の木彫作品は、函館のトラピスト修道院の《聖母子像》(1977年)であった。舟越桂の手になる半身像には、西欧彫刻と日本木彫の伝統が綾を成すように交錯しているのである。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 静かな向かい風
- 作者名
- 舟越 桂
- 制作年
- 1988
- 分類
- 彫刻・インスタレーションほか
- 材質・技法
- 楠に彩色、大理石
- 寸法
- 84.5x56.5x27.8cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1993
- 作品/資料番号
- 1993-00-0006-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/4030/
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