昭和21年(1946)に下村良之介は台湾から復員する。生家は戦災によって失われ、もちろん画材も灰になっていた。彼は紙と膠だけを購い、陶土や墨汁といった手近の素材を絵具にして制作を再開する。このとき既に、既成の日本画材料を無批判に採用するのでなく、自らの表現意欲に即した素材を模索する彼の制作態度は始まっていた。昭和23年、彼は大野俶嵩とともに、〈パンリアル〉に参加する。はじめは意識的に日本画らしからぬ主題をとりあげていたが、やがて鳥が主要なモティーフとなった。ただし鳥とはいっても鋭い線描を生かしたキュビスティックなもので、江戸時代以来の円山四条派が描いたような、旧套的な禽類とは様相をまったく異にしている。次いで1950年代末より、鳥の姿は有機的な形態に変化した。紙粘土を用い、漣のように細かい皺を寄せた和紙を貼り込み、沈んだ色彩によって触覚的な印象を強調している。この作品はその時期のもの。縦長の矩形に分割されたパネルや垂直方向に走る帯が、レリーフ状にあらわされた鳥の立ちはだかるような姿に垂直性を与えている。鳥のほこらとされる所以であろう。(R.N.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 鳥のほこら
- 作者名
- 下村 良之介
- 制作年
- 1965
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 紙粘土、顔料/紙
- 寸法
- 182×399.5cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1991
- 作品/資料番号
- 1991-00-0022-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3861/
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