1970年代後半のアメリカでは、それまでの禁欲的で厳格な表現が飽和点に達するに従って、絵画というメディアが再び力を獲得し、具象的なイメージも取り上げられるようになった。エリザベス・マレイは、ボロフスキーやバートレットと並び、このような動きを担った画家の一人である。その作風は、四角いカンヴァスを鮮やかな色彩とユーモラスな形態によって構成した半抽象絵画から、複数のシェイプト・カンヴァスを組み合わせて具象的なモティーフを大胆に展開した絵画を経て、三次元的なヴォリュームを加えたレリーフ絵画へと展開してきた。身近なモティーフに漫画を連想させる大胆なデフォルメを加え、感情のドラマに満ちた絵画表現へと昇華させる一連の作品は、今日の絵画芸術についての最も肯定的なマニフェストのーつである。《ワンダフル・ワールド》はレリーフ絵画の大作で、コーヒーカップ、受皿、スプーンがモティーフである。作家は、セザンヌの絵画に触発されたこのモティーフを繰り返し取り上げている。赤い強い色の偏平な筒として表現された巨大なカップと受皿が、斜め下へ向かって迫り出してくるダイナミックな躍動感は圧巻であり、代表作のーつに数えられよう。(Y.M.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- ワンダフル・ワールド
- 作者名
- エリザベス・マレイ
- 制作年
- 1988
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩/カンヴァス
- 寸法
- 342.9×221×101.6cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1991
- 作品/資料番号
- 1991-00-0013-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3852/
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