キアは1980年代初頭に興った新しい具象絵画の動き(イタリアではトランスアヴァングアルディアと呼ばれる)の代表的作家である。この作品にも見られるように、寒色と暖色の対比と横溢する筆致に覆われた艶やかな画面を作りだす。多くの作品において、画面の主人公は作家の心象的自画像ともみなすべき人物で、丸みを帯び、ヴォリュームのある地中海的豊かさをもつ人体が重力から切り離されて浮遊している。ここでは人物はテントの下に横たわっているが、唐突に置かれた両側の巨大な絵画、前景中景の暖味な関係などによる空間の錯綜が、かれの特徴である均衡を欠く構成をもたらしていると言えよう。また巨大な絵画は、明らかに彼が強く影響を受けているデ・キリコを連想させ、過去の美術から日常の事物まで、異種のものを自在に、偶発的私的に引用・並置している。そこに、物語風で詩情を漂わせながら、表層的で解釈の奥行きをもたない画面を演出する「引用者」の姿がうかがわれる。(Y.W.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- メランコリックなキャンプ [Malinconico Accampamento]
- 作者名
- サンドロ・キア
- 制作年
- 1982
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩/カンヴァス
- 寸法
- 290×404cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1991
- 作品/資料番号
- 1991-00-0012-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3851/
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