
《タイムレス・ペインティング》――永遠の絵画―― と名付けられたこの黒い絵画は、ラインハートが1960年から亡くなる67年まで描き続けたブラック・スクエアのシリーズの一枚であり、66年から67年にかけて行われた回顧展にも出品されている。
30年以上にも及ぶ彼の画業は、同時に、東洋思想に通じる彼の哲学的探究の実践でもあった。絵画からロマンティックな身振りや、ドラマティックな色彩、濃淡、形態の対比を排した彼は、一説には、助手に筆を委ねることで作者として描くことすら排そうとも考えていたという。全てを排し否定するように表現を切り詰めた画面は、けれども裏腹に、眺める程に上質な悦しみを観る者に与える。間近で見つめてみると深い漆黒の正方形が実は、微かな色調の違いによって九つの部分に均等に分割されていることがわかる。目を凝らしてやっと判る程度のその繊細な表情を静かに味わう時、かたくなに「芸術としての芸術」を志向し続け、同時代の美術の世界では強面の人物とされた作者の生き方の美学が、はからずも立ち上がってくるのではないだろうか。
絵画をめぐる営みは未だに終わることはないが、ラインハートにとって唯一の絵画形態となった同シリーズは、同時代のミニマル彫刻と共に、一つの美学が体現することができる究極の到達点を示すものである。(K.O.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- タイムレス・ペインティング
- 作者名
- アド・ラインハート
- 制作年
- 1960-65
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩/カンヴァス
- 寸法
- 157.5×157.5cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1991
- 作品/資料番号
- 1991-00-0011-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3850/
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