デッキチェアに深くもたれて裸の少年が眠っている。午睡だろうか。静かな室内には夏のうだるような暑気が感じられる。叙情性の高い香月の初期作品には、たびたび少年が登場する。画中の少年は、どこか人気のない場所で海や空を眺めていたり、我を忘れるかのように眠り、考えに耽っている。懐かしさや寂しさの漂うこうした心象は「見棄てられた存在」であったという香月自身の子供時代の経験から生まれたものである。後に《シベリア・シリーズ》と呼ばれる作品群を生んだ抑留体験と同様、作家にとって少年期の記憶は制作の大きな源泉となった。切り取られたような画面構成は、対象から余計なものを削ぎ落とし、単純化させてゆく方法をとる香月特有のものである。少年の顔が描かれないことによって画面には独特の余韻がもたらされている。抒情的な表現から、より平面性や構成を意識した造形へと変化してゆく過渡期の作品である。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 夏
- 作者名
- 香月 泰男
- 制作年
- 1951
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 油彩/カンヴァス
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1988
- 作品/資料番号
- 1988-00-0005-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3211/
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