1917(大正6)年熊本県に生まれた浜田知明は、東京美術学校を卒業した1939年、21歳の時に応召して翌年には中国大陸に派遣された。1944年再び入隊し、終戦を迎える。銅版画の研究を始めたのは1950年からのことである。そして同年からの5年間に、《初年兵哀歌》シリーズの15点など戦地での体験を基にした作品の制作に取り掛かった。敵味方の区別なくもたらされる戦争の悲劇を、白と黒のみの切り詰めた表現に昇華させたこれらの作品は、発表当時から国内外で高い評価を受けた。このうち、《初年兵哀歌(歩哨)》は1956年第4回ルガノ国際版画展で次賞を受賞している。1956年頃からは、現代社会に生まれる不安や矛盾などを鋭い視点で描き出す作品を発表し、多くの国際展にも出品する。1962年には第5回現代美術展で《狂った男》が福島賞を受賞した。また、銅版画集《見える人》や《かげ『曇後晴』》では、連作の持ち味を活かして現代に生きる様々な人間の姿を象徴的に描き出している。社会や政治に対する鋭い洞察力や愚かな振る舞いに対する冷静な観察に基づきながらも、その底流にある人間愛とユーモアに溢れた作品を一貫して制作する作家である。また、当初から現在に至るまでそのほとんどが単色で制作されており、技法においてもエッチング、アクァチント、メゾチント、ドライポイントなどに限られる。こうした技法の制限から生まれる簡潔で抑制された表現が、物事の本質のみを一層明確に伝えている。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 初年兵哀歌(歩哨)
- 作者名
- 浜田 知明
- 制作年
- 1954
- 分類
- 版画
- 材質・技法
- エッチング、アクァチント
- 寸法
- 23.8×16.3cm
- エディション等
- Ed. 56/100(画面外左下)
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1979
- 作品/資料番号
- 1975-00-7849-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/3140/
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