中林は、初期は社会的問題をテーマとしていたが、1970年代末より自然の植物などをモチーフとして制作するようになる。戸外より採集した草花などをゼロックスにかけてそのままの姿を転写したのち、ペンなどで部分的に加筆または消去修正を行い、さらにそれを再びゼロックスにかけて版下を作成する。《Position》および《Transposition-転位-》は70年代後半以降続けられている二つのシリーズであるが、前者が「現時点における自分」を表現しているのに対し、後者は「版の介在による実から虚への転位」を表現している。中林は腐食銅版画という作品の成立要件そのものによって、彼の精神思想の命題ともいえる「すべて腐らないものはない」ということが、この世に存在するあらゆるものに共通する、逃れることのできない運命であり、我々の日常のほんの隙間にも潜んでいるものであることを一貫して表現してきた。大学在学時に油彩を専攻していた中林は、選択授業で駒井哲郎より腐食銅版画の指導を受けたことから銅版画の道に入り、現代銅版画の第一人者として世界的に活躍してきた。銅版画のモノクロームの世界を自らの表現として選択したことは、幼少時の疎開という生活体験と、疎開先であった雪国、新潟県の白と黒の世界とに由来しているという。中林の生きざま、精神思想そのものが一体化するほどまでに腐食銅版画に魅了された作家であるといえるだろう。(A.T.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- Transposition-転位-Ⅲ
- 作者名
- 中林 忠良
- 制作年
- 1979
- 分類
- 版画
- 材質・技法
- エッチング、アクァチント(雁皮刷)
- 寸法
- 56.5×45cm
- エディション等
- Ed. 26/30(画面外左下)
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1980
- 作品/資料番号
- 1975-00-7458-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/2732/
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