
《行人》の与える印象は重く堅苦しい。この沈んだ色彩は、中国の宋一元時代にかけての山水画を思い出させもするが、陰影によって空間を慎重に捉えなおした結果ともいえる。二人の人物の姿勢は強い意志を感じさせるが、窮屈でもある。とりわけ蹲る者の足の組み方は不自然なものだ。また、背景に描きこまれた樹木のスケールからみて、この人物像はいかにも大きすぎる。一見したところそういった矛盾が目立たないのは、それらが巧妙に画面のなかに嵌め込まれているからである。膝頭と足先の曲線は、蛇行する川面につながり、それらを手前へと導く。直角に組み合わされた脚部は、直立する人物とともに、垂直線と水平線を強調し、支持体の縦と横の枠にしっくりと馴染んでいる。まるで壁のように屹立する背景は、人物像と同様、支持体平面に平行となるように立ち上がっているのである。このような色彩の使用法や平面の強調は、本図が、ゴーギャン、ナビ派はもとよりキュビスムや抽象絵画の洗礼をうけたものであることを示している。髙山辰雄の絵画のもつ抑制された晦渋な印象は、日本画の形態や色彩を、平面絵画の構成要素へと翻訳する過程で生み出されたものなのである。(R.N.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 行人
- 作者名
- 髙山 辰雄
- 制作年
- 1969
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- 紙本彩色
- 寸法
- 226.4×147.4cm
- 受入年度
- 1975
- 作品/資料番号
- 1975-00-1078-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/695/
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