何かが眼前で破裂し、その中から大量の絵具がカンヴァスに流出していくかのようだ。緩慢な動きが画面全体に拡がり、ゆるやかな曲線が生み出された。赤、黄、緑といった原色のエナメル絵具を使用することで、油絵具にはない軽快な調子が現れている。どこかユーモラスな右側の瓢箪形と左の細い流線は、1960年代に元永が特に好んで使った型であり、この二つを組み合わせて数々の作品が生み出された。1955年から1971年の長きにわたって具体美術協会の主要メンバーとして活躍した元永は、1959年頃に独自の「流し」という技法で新境地を開いた。これは日本画の「たらしこみ」の技法を応用したもので、床置きしたカンヴァス上に絵具を落とし、カンヴァスを傾けて流していく手法である。絵具の量、カンヴァスの傾斜の度合いによって、絵具の軌跡が福雑な曲線を描き出す。一見、偶発的な意匠のようだが、「明確なフォルムが底にある。つまり下絵がある」。フォルムに対する元永の鋭敏な感覚が見事に表現された一枚。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- 作品
- 作者名
- 元永 定正
- 制作年
- 1962
- 分類
- 絵画
- 材質・技法
- エナメル/カンヴァス
- 寸法
- 173×274cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1978
- 作品/資料番号
- 1975-00-0520-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/548/
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