
杉本博司の作品は、見る者にとってある種の冷たさとなつかしさを併せもっている。1970年代から20年間に亙り、杉本は「ディオラマ」「劇場」「海景」の3シリーズを並列的に制作してきた。これらはすべて「時間」をテーマにしていると言えよう。「ディオラマ」は自然史博物館に展示された動物剥製とその描かれた背景を、あたかも現実であるかのように撮影したシリーズである。生きているかと見まがう死体は、現実の世界や生の存在感の危うさ、死(断絶)によってしか見えてこない生(時間)を逆照射している。「劇場」は映画1本分の上映中、シャッターを開放にして撮影したもので、映像は白く輝くスクリーンとなって、暗闇の劇場内部を仄かに照らし出す。写真はある瞬間を捉えることによって時間を美術のなかにもちこんだが、ここでは瞬間の映像の連続である映画を再び写真に撮ることにより、細切れに分解された時間が「持続する時間」となって写真作品のなかに映像化している。「海景」では、雲や波濤などドラマティックな要素を注意深く避けて、原初的な海のイメージ、記憶のなかの海の映像を求めて撮影している。ここでの「時間」は、記憶、さらにその重なりとしての歴史につながっている。ここに端的に現れているように、彼は見たものを作品化するのではなく、自分のなかにもたらされたヴィジョンを実現するべく、写真をそれに近づけていく。そのため、その映像は被写体に左右されることなく、冷徹な距離を介在させるが、同時にそれが杉本の深奥に潜む記憶像であるが故に、見る者にノスタルジーに近い親近感をも感じさせるのである。(Y.W.)
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- English Channel, Weston Cliff
- 作者名
- 杉本 博司
- 制作年
- 1994
- 分類
- 写真
- 材質・技法
- ゼラチン・シルバー・プリント
- 寸法
- 43×54cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1996
- 作品/資料番号
- 1996-00-0023-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/4313/
東京都現代美術館のその他の収蔵品 (8084)

母と子
池部 鈞
東京都現代美術館

レーガンと郭
郭 徳俊
東京都現代美術館
![作品画像:Aノ楽園[13]](https://museumcollection.tokyo/wp-content/uploads/2022/08/15595.jpg)
Aノ楽園[13]
荒木 経惟
東京都現代美術館

JEU D’OBJET 1 カットグラス
加藤 太郎
東京都現代美術館

色回路
小田 襄
東京都現代美術館
](https://museumcollection.tokyo/wp-content/uploads/2022/08/13247.jpg)
[小清水漸作品写真集 2](74/74)
小清水 漸
東京都現代美術館

植木鉢でできた植木鉢(インスタレーションのためのエスキース)
野村 和弘
東京都現代美術館

London 18 (Kensington Church St.)
吉田 克朗
東京都現代美術館

もし我々が五角形の記憶装置であったなら
塩見 允枝子(千枝子)
東京都現代美術館

布をまとった立像
小島 信明
東京都現代美術館

少女
長谷川 利行
東京都現代美術館

現在位置 フレーミング B
木村 光佑
東京都現代美術館

Work “10”
吉田 克朗
東京都現代美術館

龍の器 I
横尾 忠則
東京都現代美術館

偏執狂 Ⅱ
福島 秀子
東京都現代美術館

作品
村上 友晴
東京都現代美術館