毛利武士郎(1923-2004)は、1950年代から一躍その名が知られるようになった作家である。そのきっかけを作ったのが、1954年の「第6回読売アンでパンダン展」に出品したこの《シーラカンス》である。「読売アンデパンダン展」は、新聞社主催の無審査自由出品制の展覧会で、ここから多くの新人が発掘された。彼もそうした作家の一人であった。《シーラカンス》というタイトルは、当時マダガスカル島近海で発見された古代そのままの魚に想を得ている。ただし、一見して明らかなように、その魚の姿をそのままに象ったものではない。作家が「シーラカンス」という言葉を通して伝えたかったのは、現代に生きる古代的な存在とでも言うべきものである。石膏を用いて作り出された形は、何かの生き物であることを思わせつつ、ごつごつとした質感や重々しい重量感、どことなくユーモラスな感じ見る者に伝える。それは特定の生き物の姿ではなく、おおらかな原初的生命そのものの姿なのである。毛利の彫刻は、この作品に見られるような有機的な形態をとるものと、現代社会を厳しく見据えて作り出された幾何学的な抽象彫刻の二つの方向性を持っている。相反するともいえる二つの傾向がせめぎあい、そのどちらにも安易に流れないことがこの作家の特質であり、また評価されている点である。
- 所蔵館
- 東京都現代美術館
- 作品/資料名
- シーラカンス
- 作者名
- 毛利 武士郎
- 制作年
- 1953
- 分類
- 彫刻・インスタレーションほか
- 材質・技法
- 石膏
- 寸法
- 107×133×55cm
- 受入区分
- 購入
- 受入年度
- 1981
- 作品/資料番号
- 1975-00-4162-000
- 東京都現代美術館コレクション検索
- https://mot-collection-search.jp/shiryo/1408/
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